父の苦悩

4/10
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 そのウサギの番組を見てからすぐ後。一週間も経たない頃に、彼の考えを確信へと変えたある出来事がありました。  流れ星事件です。  その夜、私と息子はテレビをつけたまま、リビングで食事をしていました。  ニュースから「今夜、流星群がピークを迎えます」と聞こえてきたので、私は息子に「流れ星が流れている間にお願い事を言うと願いが叶うんだよ」と教えました。  息子は素直な子なので、私の言葉を信じ、お願い事を一生懸命考えていました。そして「明日クレープ屋さんが来るといいなあ」と言いました。  このクレープ屋さんというのは、家の近くのスーパーに不定期でやってくる移動販売のクレープ屋さんのことです。息子はここのクレープが大好きで、私はしょっちゅうスーパーに行こうとせがまれていました。クレープ屋さんはいつやってくるか分からないので、次第に私を待たずに一人でお小遣いを握りしめて、スーパーまで偵察に行くようになっていました。 「偵察隊さん、今日はクレープありましたか?」と私がおどけて聞くと、「今日クレープ来てたよ! 買って食べた!」と言うのです。私はとても驚きました。もう一人で買い物ができるようになったのかと。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!