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「やったじゃねえか!」 此処は綾の自室。 僕は気絶していた筈なのだが、どうやって綾が僕を自分の自室まで運んだかが分からない。 いや、知らない方が己の為なのかも知れない。 「取り敢えず、撮れたんなら事情を話してくれる?何が何だか分からない  んだけど…」 僕が持たされていたカメラを再生しながら綾は言った。 「動画だよ、俺が仕事にしてるのは。  お前も見た事あるだろ、所謂ユーチューバー って奴だ」 また気絶しそうになった。 一体、何を言い出すかと思えば。 「その世界で生き残るのはほんの一握りだけで、大半は炎上して  辞めてるか、メンタルが持たなくなって引退してるかだ。  仕事としてやって行くには厳しすぎる世界だろ」 「それがそうでも無いんだなこれが」 「どう言う事だよ?」 綾は嬉しそうにこう言った。 「人間の裏側を見た事あるか?この世の中の人間が求めてるのは  誰からも愛されるキャラクターじゃないんだよ、俺は自分のチャンネル  を使って色んな人間が色んな言葉を発せる掲示板の様なモノを作りたいん  だ。だから、お前も手伝ってくれるよな?」 僕は言葉が出なかった。 あれ?可笑しいな。 綾ってこんな黒い部分に喰い付く様な奴だったけ? 僕の知ってる綾はこんな奴じゃなかった筈だ。 爽やかなモテ男だった綾の姿は何処にも無い。 僕は今、目の前に居る人間が本当に綾なのかを疑ってしまった。 「なあ…お前確かパソコン使えたよな?頼む、頷いてくれ」 「わ、分かった。その代わり、危険だと思ったら直ぐ辞めるから」 「サンキュー!お前しか居ないと思ってたんだ」 あの頃の綾はもう居ない。
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