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楽しい時は時間の流れが早いもので、気が付けば5日間が過ぎ、明日には帰らなければならない。
綿貫さんと私は蜜月の日々を過ごし、女として愛される喜びを教えて貰い、私は満たされた。
大人の付き合いとして、笑顔でお別れをしたい。
そう自分に言い聞かせたが、考えるだけで涙がこぼれそうだ。
「お風呂、お先に頂きます」
綿貫さんに告げ、浴室へ行き湯舟に浸かる。溢れる涙が止まらない。
こんなにも慈しみ愛され包まれることなど今までなかった。
たった、数日のことなのに離れ難い。
出会ったばかりの人を心から愛してしまった。
これほどの熱い想いは今まで誰にも持ったことはない、そう、主人にさえも
この先もこんなに誰かを愛せる日が来るとは思えない。
今、一生に一度の恋をしている。
お風呂から上がり着衣を整え、部屋に戻ると
綿貫さんは、晩酌をしながら私を待っていた。
ああ、明日帰ると告げなければならない。
覚悟を決めて顔を上げた時
綿貫さんに「お風呂で泣いたね」と、言われた。
私が、戸惑い言いあぐねているとテーブルの上に一枚の名刺を差し出した。
「それは、俺の名刺で裏に自宅の電話番号と携帯の番号も入っている。
沙羅の心が決まったらいつでも連絡が欲しい。待っている」
思いがけない言葉に涙がハラハラとこぼれ、やがて嗚咽に変わる。
泣きじゃくる私の肩を優しく包み込み、抱きしめられた。
私は、一生に一度とも言える、熱い激情に燃え上がった恋を掴んだのだ。
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