渇望の夏

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 軽い食事を取り部屋にホテルの戻る。 さして広くない部屋にはベッドと椅子、テーブル兼化粧台その上にはTV。 なんの気無しに付けたTVではバラエティー番組が放送され、ゲストのアイドルを司会の芸人が弄っていた。 『お前、30歳でアイドルなんて無茶やなーハハハ』 笑い声とアイドルのはしゃぐ声がTVから聞こえた。 「30歳でアイドルなんていい時代になったわね」 25歳を過ぎたらクリスマスケーキの売れ残り扱いされた時代。同じ会社で年齢も条件も丁度良かった主人と結婚した。燃え上がるような恋ではなかったが、それなりの恋愛をしたつもりだった。 ただ、”愛情は?”と問われたら、返事が見つけられない。 愛情という言葉の”愛”は無く、強いて言えば”情”ならある。 いかがわしいお店(ソープランド)に行った主人に対して 浮気をされたと怒る気もない。 裏切られたと怒る気もない。 自分が女として必要とされていない事が悲しい。 お前ではダメだと否定された様で悲しい。 女の平均寿命が87歳まだ折り返しにも来ていない。 それなのに… 再び涙が流れ落ちた。
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