88人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあね、お母さん行ってくるよ」
「楽しんできてね」
「お前、本当に行かないのか」
「いいのよ、お義母さんもあなたと詩織が居れば十分なんだから お互い気を使わなくていいでしょう」
「たまには、顔ぐらい出したっていいじゃないか」
はぁ、いつまで経っても親が一番なのかしら、わざわざ嫌味を聞きに行くのなんてごめんだわ。まったく、いい年して男が一生マザコンて本当なのね。
心の中は、不満で一杯になりため息が洩れる。
「もう、バス着ちゃうわよ。じゃあね」
「ほら、お父さん早く」
「行ってらっしゃい」
はしゃぐ娘と不満そうな主人を送り出し家の中に入り、壁に掛かったカレンダーに目をやり、ニンマリする。
「今日は、日曜日、次の日曜日まで私は自由だわ」
取り敢えず、買い物でも行こうかしら、暫く使わないから主人の背広をクリーニングに出さないと…。
ポケットの中に何か残っていないか探ると案の定、ハンカチが出てきた。
「もう、使ったら出してって言っているのに」
ハンカチを取り出した時にひらりと名刺のような物が落ちた。
拾い上げて見るとそれは、いかがわしいお店のカードで女の子の源氏名に出勤日のカレンダー”また来てね”という手書きの文字。
思わず、息が詰まる。
主人とは、もう、ずいぶんしていない。
お金を払ってよそで発散していたなんて……。
目に涙が溜りハラハラと流れ落ちた。
ひどい、ひどい、ひどい、
最初のコメントを投稿しよう!