渇望の夏

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「じゃあね、お母さん行ってくるよ」 「楽しんできてね」 「お前、本当に行かないのか」 「いいのよ、お義母さんもあなたと詩織が居れば十分なんだから お互い気を使わなくていいでしょう」 「たまには、顔ぐらい出したっていいじゃないか」 はぁ、いつまで経っても親が一番なのかしら、わざわざ嫌味を聞きに行くのなんてごめんだわ。まったく、いい年して男が一生マザコンて本当なのね。 心の中は、不満で一杯になりため息が洩れる。 「もう、バス着ちゃうわよ。じゃあね」 「ほら、お父さん早く」 「行ってらっしゃい」 はしゃぐ娘と不満そうな主人を送り出し家の中に入り、壁に掛かったカレンダーに目をやり、ニンマリする。 「今日は、日曜日、次の日曜日まで私は自由だわ」 取り敢えず、買い物でも行こうかしら、暫く使わないから主人の背広をクリーニングに出さないと…。 ポケットの中に何か残っていないか探ると案の定、ハンカチが出てきた。 「もう、使ったら出してって言っているのに」 ハンカチを取り出した時にひらりと名刺のような物が落ちた。 拾い上げて見るとそれは、いかがわしいお店(ソープランド)のカードで女の子の源氏名に出勤日のカレンダー”また来てね”という手書きの文字。 思わず、息が詰まる。 主人とは、もう、ずいぶんいない。 お金を払ってで発散していたなんて……。 目に涙が溜りハラハラと流れ落ちた。 ひどい、ひどい、ひどい、
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