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かつて世界平和という言葉があった。
ならば現状はその世界平和とは全く無縁であろう。
未知の生物、ビーストが地球全土に現れ、人々などの生物を襲った時から平和は崩れ去った。
始めは数が少なかったビーストもしばらくすれば数も増えていき、進化をする。もうすでに簡単にはビーストを倒すことはできなくなった。
世界全体でみると最初は各国協力し、ビーストを駆除していった。その名を第三次世界戦争と人は名付けた。世界全体でビーストを倒す。世界全体で常に戦争が起きている。それを象徴し、今までの第一次、第二次と続いていた「世界戦争」の名をプラスにとらえようとしたのだ。
しかし、第四次世界戦争はすぐに起きた。
一気にビーストは世界全体に広がっていき、高い軍事力を有する先進国でさえも自国を守ることに精一杯になってきたのだ。そのために国は武器を大量に輸入しようとしたりして国同士で争いに発展。それが第四次世界戦争である。
現在、どの国も他国とは関係を切り、昔の日本のようにすべての国が鎖国状態という不思議なことが起きている。
そして我が国である日本はと言えば。もともと多くを輸入に頼っていた国であるため、鎖国初期は国全体で飢饉だのビーストに襲われただの大変な騒ぎであった。
しかし、そんなある日不思議なことが起こったのだ。
多くの人がビーストに日常的に襲われるようになって武器が欲しいと願っていたら自分で、いや自分から武器が出てきたのだ。それも人それぞれであり、武器が出てきた者もいれば出てこなかった者もいた。
これによって日本は国を立て直すことに成功した。武器を作れる者を軍人として希望者から募集、そして管理、訓練、運営。他国との戦争が起きた際には軍人の中から部隊を作成しいくつかを戦地へ送る。
そして日本はその武器を効率よく生成できる者を集めるために研究を重ねた。
その結果が精神力が高ければ高いほど武器を作れ、強くなる、というものだった。そしてその精神力を数値化し、計測できるようにしたのが「心域」である。
心域とは心を数値化して閲覧できるようにしたものである。もちろん、あくまで数値化した状態であるため思考は測定できない。精神、意思、信条、執着、心持ちなどのことだ。心域とはこれらの総称、心域値がそれらの数値自体を指す言葉である。
これらを発見したことにより日本はさらに効率よく心域を使うことができるよう、研究に研究を重ねた結果、スキルを発見し、さらにそれらの強さを図ることができるステータスを開発。スキルを自身で作り上げる方法までも見つけ出すことができ、心域を使った国の第一人者として世界中に知れ渡った。
ビーストもおかげで容易に倒すことができるようになり、だんだんと国内は平和へ。大きな敵はビーストであるものの、最近の主な敵は外国と言えるほどまでになっていた。
心域を使った武器は整備費いらず。国費も減らず、素晴らしいものだ。そのため国はどんどん軍を拡大していった。
強い者を早くから育成し、国の守備の要とするため、身体測定とは他に学校では毎年心域値測定、心域訓練、心域武道大会を行うことを決定した。中には現役軍人を上回るほどの強い人物もおり、その子供たちは特秘生として国から保護対象とされた。
もちろん、外国でも心域は普及している。圧倒的に日本には劣るものの。ただ、周知の事実ではあるもの、実際に使用しているのは独逸、露西亜、亜米利加の三ヶ国のみ。人数も日本に存在するわずか数百の部隊の隊長ほどの人数である。ただ、その多くは日本の部隊の隊長格ほどの強さを有しており、日本も下に見切れない状態ではある。
ただ、今。
ビーストとの戦いであるはずであるのに各国は奪い合いをし、いくつも国が失われている現状である。
日本は心域によって軍事力を大幅に拡大し、戦争が始まる以前の状態に戻ってきたはいいものの、いつその日本有利の状態が崩れてもおかしくない。平和はビーストが現れたようにいつ崩れてもおかしくないのだ。
これは第三次世界戦争と第四次世界戦争の真っ只中に生きる人たちの物語である。
苦しみもがき、またいつかの世界平和に憧れ、そして小さな平和を壊されることを恐れる人たちの話だ。
また、世界平和が訪れますよう―――。
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