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石塚孝雄は、蜜柑畑の一角で、変わったカラスアゲハを見つけた。
蜜柑の葉に止まっているそれは、一見カラスアゲハだが、よく見ると、頭が蜂の形をしている。
蝶の中には頭だけが5令幼虫の形を残している「蛹化不全」の個体が存在する。
頭部のホルモン異常によって起こるらしいのだが、どのようにしても生き残ろうとする昆虫の生命力は凄まじい。
これもその一種だろうか。
しかしこれは、頭が蜂そのものだ。
こんな個体は今までに読んだどの文献にも載っていない。
これは、世紀の大発見では無いか。
石塚孝雄は動かしやすく改良した網を持ち、息を詰め、カラスアゲハに近づいた。
や、と、網を払った。
カラスアゲハは空高く、飛び去って行った。
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