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アゲハヒメバチの幼虫は、カラスアゲハの蛹のなかで懊悩していた。
僕は、アゲハチョウの幼虫に寄生する寄生蜂だ。
DNA内の遺伝子によれば、僕はカラスアゲハの体を食べてこの中で成長し蛹になり、成虫に孵って外の世界に出る。
だけど、僕はカラスアゲハを殺したくない。
アゲハヒメバチの前世はアゲハチョウだった。
アゲハチョウだった頃、アゲハヒメバチはカラスアゲハに憧れていた。
大きくて、悠然としててかっこいい。太陽の光を受けて、翅の青碧色がキラキラ輝くのだ。蝶の王様のようなカラスアゲハになりたいと、彼に遭遇するたびにアゲハチョウだったアゲハヒメバチはいつも思っていた。
そう、僕は、カラスアゲハになりたいんだ。
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