紙の竜

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「ああ、なんと美しい」  紙の竜たちは、ラルフに感謝するかのように、彼を中心に踊り始める。 「そうか、そうか。嬉しいか。わしも嬉しいぞ」  静かに微笑んだ瞬間、ラルフの胸に矢が刺さったようた痛みが走った。 終わりの時が近づいている。胸の痛みに耐えながら、ラルフは紙の竜たちに、 最初で最後の命令を告げた。 「竜たちよ、わしを天空に連れていってくれ」  命令を受け入れた紙の竜たちは、ラルフの体を持ち上げ、窓から天空へと躍り出た。空の風が優しい。ラルフを歓迎してくれているようだった。住み慣れた町が小さくなり、遠く思えていた山々が見える。  紙の竜たちはラルフを支えながら、空を舞う。一時の命を喜んでいるようだった。 「ああ、わしは竜と共に踊っている」  ラルフは満足だった。もう何も思い残すことはない……。  空に溶け込むように、ゆっくりと眠りについた。もう2度と目覚めることのない、永遠の眠りに。  ラルフの生涯は竜と共にあり、竜と共に終えた。彼らしい最後であった。  紙の竜たちはラルフの命が尽えたことを悟ると、守るように寄り添った。 そして、太陽に向かって進んでいった。紙の竜たちの体が、陽の光りで少しずつ燃えていく。自らの体が燃え始めても、竜たちは亡骸(なきがら)の側を離れなかった。  ラルフの体も火で包まれていく。紅く燃える太陽のように光り輝くと、陽の光りの中に消えていった。  ラルフと紙の竜たちは、何処にいってしまったのか。  それは天の竜だけが知っている──。             了
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