14人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ、なんと美しい」
紙の竜たちは、ラルフに感謝するかのように、彼を中心に踊り始める。
「そうか、そうか。嬉しいか。わしも嬉しいぞ」
静かに微笑んだ瞬間、ラルフの胸に矢が刺さったようた痛みが走った。
終わりの時が近づいている。胸の痛みに耐えながら、ラルフは紙の竜たちに、
最初で最後の命令を告げた。
「竜たちよ、わしを天空に連れていってくれ」
命令を受け入れた紙の竜たちは、ラルフの体を持ち上げ、窓から天空へと躍り出た。空の風が優しい。ラルフを歓迎してくれているようだった。住み慣れた町が小さくなり、遠く思えていた山々が見える。
紙の竜たちはラルフを支えながら、空を舞う。一時の命を喜んでいるようだった。
「ああ、わしは竜と共に踊っている」
ラルフは満足だった。もう何も思い残すことはない……。
空に溶け込むように、ゆっくりと眠りについた。もう2度と目覚めることのない、永遠の眠りに。
ラルフの生涯は竜と共にあり、竜と共に終えた。彼らしい最後であった。
紙の竜たちはラルフの命が尽えたことを悟ると、守るように寄り添った。
そして、太陽に向かって進んでいった。紙の竜たちの体が、陽の光りで少しずつ燃えていく。自らの体が燃え始めても、竜たちは亡骸の側を離れなかった。
ラルフの体も火で包まれていく。紅く燃える太陽のように光り輝くと、陽の光りの中に消えていった。
ラルフと紙の竜たちは、何処にいってしまったのか。
それは天の竜だけが知っている──。
了
最初のコメントを投稿しよう!