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「夢の竜の美しさには遠く及ばないな。だが数だけは同じぐらいできた。さて」
ラルフはゆっくりと立ち上がった。
「おおっと」
体がふらつく。このところ食事をまともに食べていない。何を食べても美味くないのだ。
「まさに紙を食べているかのようだな」
誰に問われたわけでもないのに、ひとり呟いた。
机の引き出しを開けると、愛用のペンケースを取り出した。
「さぁ、紙の竜たちに目を入れてやらねば」
それはラルフが若い頃に愛用していた魔法のペンである。そのペンで、いくつもの呪文を創り出したり、紙製の従者を作って従わせてきた。
「目を入れてやれば、おまえたちは生きることができるのだそ」
それは魔法によって作り出される、かりそめの命。よくわかっていた。老いたラルフにとっては、自らの命を注ぎ込む行為であることも。
「ふぅ、はぁ、うぅ、うぅ」
もはや動物のような声をあげながら、ラルフは紙の竜たちに、ペンで目を入れていく。
「さぁ、完成だ」
目を入れられた竜たちは、その時を待っていたかのように、部屋の中で飛び始めた。
舞い踊るは、紙の竜の群れ。小さいものの、ラルフが夢で見た光景だった。
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