序章

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 鈴野さんの話は少し難しかったけど、私にも似た経験がある。  私と鈴野さんの間に共通のことなんてないと思ってた。でも、そうじゃなかった。 「佐藤さん、聞いてくれてありがとね。なんか、言いたいことを吐き出したら楽になったわ」  鈴野さんはふわりと笑った。  その笑顔があどけなくて、鈴野さんを身近に感じた。 「良かった! 実はね、私も同居してるの」 「そうなの? やっぱり、不満とかある?」 「モチロン、いっっっぱいある! 祖父母の生活スタイルに合わせないといけなくて、自分のしたい部活が選べないとか……」 「分かるわ! 帰宅時間が早い部活じゃないとダメなのよね~」 「こんな話に共感してもらえたの初めて! ねぇ、私の話も聞いてくれない?」  私は一気にまくし立てると鈴野さんの了解も待たずに不満を語り始めた。    私の家は男尊女卑が根強く残っているの。  男は外で働くから偉くて、家事は女の仕事。  今の時代おかしいよね? でも、そんな時代錯誤なことが祖父母と父にとっては当たり前なんだよ。  でね、私も結婚するのが幸せだって言われるの。  学歴なんて女に必要ないってね。  でもね、私はバリバリ働いて自分でお金を稼ぎたいの。  私にとっての幸せは大好きなことを仕事にすること。  だから、大学に行って、沢山学んで一流企業に就職するの。  それで、祖父母を見返すのっ!
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