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1神様を信じることができますか Do you believe in god?
“神様なんているはずない”
ずっと、そう思っていた---。
高校二年の夏---。私立明光高校に通う日浦和奏(ワカナ)は、昼休みに部室でひとり演奏曲の練習をしている。
和奏は、フルート担当でパートリーダーであり、吹奏楽部のエースでもある。
文武両道を掲げている進学校のため、
毎日の学習と練習の両立が欠かせないのが大変だ。
部員数は、五〇人を超える。
その中からオーディションで選ばれた三〇人が、コンクールに参加できる。
そのため、部活の日以外でもできる限り欠かさず練習している。
制服の白いブラウスに汗が垂れる。
汗をタオルで拭き取る。
いつも同じ箇所を間違えるので、反復練習をくり返す。
楽譜の隅々に書き込んだ文字は、汗で滲んでいる。
タオルで汗を拭きとりながら、ふと思う。この楽譜と何回格闘したのだろう。数えきれないほどの汗と涙で、ふやけた楽譜にご苦労さまと伝えたい。
切れかけた楽譜は、テープを貼って何とか使用している。
楽譜は、心に似ている。一度切れたら
元に戻すことが難しい。
昼休みは、四〇分なので十分を昼食の時間にすると効率的に練習できる。
授業が始まるまで、あと五分。急いで部室を出た。
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