高原鉄道（中）

２０－１

　権藤は短めの煙草、ショッポ（ショートホープ）を灰皿に押しつけ、揉み消した。ショッポ(ショートホープ)は、揉みくちゃにされてとどめを刺されていた。
「細筒よぉ。この落としまえ、どうつけてくれるんだよ！」
「めんぼく次第もございません……」
「謝って、どうにかなるのかよ！」権藤が組事務所の応接室で、テーブルの上にある紙切れをバン！　バン！　叩く。あやうく、湯呑がひっくりかえりそうになる。「――これをよく見やがれ！」

　セルビデオ・買い取りマセンッス（株）
　㊙　月間ＡＶ売上ランキング（全国集計）　

　１　　安藤ラララ　　超神乳おんな教師　　　１０４６本
　２　　深畑みいえ　　汗だく・眼鏡痴女　　　　６８７本
　３　　まりな・松本　どスケベ奥さん　　　　　２１５本
　４　　深畑みいえ　　眼鏡っ娘・ＯＬ　　　　　２０１本
　５　　梅木ルイ　　　銀閣寺５　　　　　　　　１３２本
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　９８　素人多数　　　薄ぼかし・ナンパ街道　　　　１本
　９９　黒木樹　　　　老舗旅館の若女将・淫らなおもてなしサービス　０本

「ありゃま！　これはいったい、どないしたんやろ？」監督は売上報告書に目を見張った。「０本って書いてあるような……？」
　権藤は目を開いてしっかりと見ろ、というように監督の鼻っつらに書面をつきつけた。監督はうけとり、天井にむけて透かすようにして見る。「権藤はん？　この書類をどこで手に入れはったんでっか？」
　権藤が監督の手から売上報告書を奪うようにとると、所定の位置とでもいうようにテーブルの上にもどした。
「これは、おれがショバ代を徴収しているセルビデオ店。買い取りマセンッス・杉並荻窪店の店長からコピーしてもらったんだ」
「そうでっか？」監督は腕組みのうえ、首をかしげた。「そやけど、なんで売れへんかったんやろなぁ？」
「あたりまえだろうが！」権藤の拳がテーブルを叩く。「こんな駄作、だれも買うわけねえだろうが！」
　権藤は肩を怒らし目を血走しらせ、監督は肩をすぼめてしゅんとした。
「――しつれいします」