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26-12
「――うおーっ!」
権藤が三下に躍りかかった。
「きゃーっ! ア、アニキィーッ!?」
権藤はリノリウムの床に三下をひきたおし、馬乗りなって首を絞めだした。「てめえ! よくも、彼女をあんなにしちまいやがって!」
三下はもがき苦しみながら必死のパッチで訴えた。「アニキ! お気をたしかにぃ! なにをわけのわからないことを言ってるんですかい!」
「おれには、できねえ――」権藤は言った。
「はあ?」三下は首をかしげた。
「――彼女を、黒木樹をそんなふうにして、いいわけがねえ」
「アニキ? しっかりしてくだせえよ。極道だったらそんなこと、わけねえじゃねえですかい。とっとと黒木樹をソープで働かせて、細筒の借金の肩代わりをさせりゃ、アニキもおれも、また組にもどることができるんですよ」
「いやだ! おれはいやだ!」権藤は首を横に振った。「彼女はおれが守る!」
「ア、アニキィ……」三下はもうほとんど泣いていた。「とうとう、頭がおかしくなってしまったんですね……」
細筒監督は権藤を見て呆れていた。なにをこのお人は勝手に盛りあがって、勝手に凹んではるんやろう? 監督は権藤のこの様子に、精神が不安定なんやろか? ストレスが溜まってはるんやろか? と、若干気の毒にもおもったし、権藤が黒木樹に電話して気をとられている隙に脱出する、作戦名まで考えた『黒木樹にイタズラ電話・いまパンツはいてるぅ?』が失敗におわったことも理解した。
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