ホームにて

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蒸し暑い夏の夜だった。 JR相生(あいおい)駅のホームで帰りの電車を待ちながら、 わたしは胸にざわつく気持ちを抱えてぼんやり(たたず)んでいた。 電光板の表示では、 次の電車の到着時刻は「22時48分」。 (5分後か……) 時計を見やり、 そう思ったのはずいぶん前で。 体感的には5分どころか、 もう15分は経った気がする……。 (はて……) と再び確認すると、 腕時計の針は止まっていた。 (……クォーツが故障するはずがない) 昭和生まれの信仰で、反射的にそう思ってみたが、現にそうなら仕方ない。 それより電車の遅延について、何も通知が出ていないことの方が奇妙に感じられた。 (駅員を探して聞いてみるか……) だが、この場所を離れたことで、運悪く終電(つぎ)を逃したら? 残業疲れの脚で踏んばり、駅前でタクシーを待ち続ける気力は湧いてこなかった。 誰かに聞いてみようにも、 ホームに他に人影はなく。 黄ばんだ水銀灯の明かりが、 狭い屋根の下を写真のようにチラつきもせず照らしている。 また5分、経つ頃に。 わたしはその違和感に気づいた。
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