ホームにて

——運行見合わせのお知らせ。

２２：５２着
播州赤穂行、普通電車。

当駅内で発生しました人身事故の影響のため、ただ今この電車の運行を、一時的に見合せております。

お急ぎの方におかれましては、ご迷惑をおかけしますことを、深くお詫び申し上げます。

……もう一度、それを確かめるため、手元にちらりと目を落とす。

じっと見てみるまでもなく、

わたしの時計のガラスカバーは粉々に砕けてしまっていた。

「……そうだ。思い出した」

ここより一段低い位置から、
見上げた不思議なホームの景色。

硬い線路の感触も、まざまざと蘇ってくる。

（わたしは線路に飛び降りたのだ……）

自殺したかったわけではない。

帰りの電車を待っていた時、
すぐ隣にいた少女が不意に、
倒れ込むように線路に落ちた。

ホームにはわたししかいなかった。

（電車が来るまで、あと５分……）

駅員を呼びに行くよりも、
非常ブザーを探すより早く、

とっさに足が動いていた。

時計はおそらく着地の際に、
どこかにぶつけでもしたのだろう……。