殻と檻

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 宮地によって持ち掛けられたテレビ出演は、宮地の予想より少し早く、一か月半後になった。化粧会社とのコラボ商品の発売の二週間前なのだという。  懸念していた球体の型については、社長が非常に張り切って作ってくれたおかげで、一週間で完成に至った。型は球体を上下で四つの等距離で分解できるような仕組みになっていた。だが樹脂を流し込む量を見誤ると、型からあふれることがあったため、社長は納得がいっていない様子だった。  千咲からすれば、わずか一週間で使える型を作ってくれたことに感謝しかない。あくまで今回の作品は試作品としてテレビには出してもらうため、不安こそあっても、そこまで気負うようなことはなく、作品作りを進めていく。  底に敷き詰めるための小石は湖から持ってきた。一つ一つを丁寧に洗い、不純物があまり混じらないように気を付ける。小石そのものの傷などは味になるため、そのままだ。 問題は鱗の材料だった。実物の鱗は魚の体を守るもののために堅い。けれどこの作品での鱗は、見た目に柔らかさを出したいと考えており、光り方で柔らかさを出すか、そもそもの材質を柔らかいものにするかで迷った。  これ以上一人で考えても頭打ちだと思い、千咲は夕食の席で伊三六に相談することにした。
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