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「砂利は湖からって聞いていましたけど、水草はどうしたんですか? 本物ではなさそうですけど」
「これはプラ板を使って作りました。光を見せるために、透明感のある素材で統一しようと思ったんです。紙やすりで傷をつけて、少しくすんだ光り方をするようにしています」
プラ板の水草は、表面の傷のおかげでぼんやりとした光り方をしているために、つるりとした表面でしっとりと光る鱗を引き立てている。
ぐるぐると球体の周りを回りながら、清香は何度もため息を漏らした。
「好きだなあ、いいなあ。これでまだ完成じゃないっていうのがまたいいですねえ」
「社長さんにもお礼を言いたいので、落ち着いたらまた連れて行ってくれますか?」
「もちろん! その前に、テレビでの受け答えの台本を見ないとですね」
取材日を前にして、テレビ局の担当者からインタビュー時の台本が送られてきた。簡単な自己紹介と代表作を見せ、宮地の人となりについて答えるものだった。
ただ、千咲の作品説明に関しては空白になっている。
「インタビューにも台本があるって、びっくりしました」
「台本なしだとアドリブの掛け合いができなきゃいけないですし、短い尺の中で伝えたいことをしっかりと伝えるためには、簡単なシナリオも必要ですからね。……うん、おおよそこのままの台本で大丈夫じゃないですか?」
一通り台本に目を通した清香は、千咲に断ってから机と椅子を借り、何かを書き込み始めた。千咲が覗き込んでみると、作品の説明を書いているようだった。千咲の方を見ないまま説明を始める。
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