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作りたいから作る。そんな気持ちで作品作りを行ってきた。けれど、自分の想いを突き詰めなければ、『底』を表現できないままだと気付いた。
「ちゃんと言葉にできたのは今が初めてなんですけど、多分今までも私はそのつもりで作品を作ってきました。作品に込められるのは自分の想い。だからきっと、人の心と言っても、私の心」
胸に左手を当て、右手でその手首を握りながら祈るように言葉を続ける。
「大それたことを言ってますけど、結局は作品を通して描いた、私の心に共感してほしいだけなのかも」
その言葉を聞きながら、清香はシーグラスの鱗を、まるでご神体を扱うような恭しい手つきで指し示す。
「この鱗、ハートの形に見えるなと思っていましたけど、あなたの心だったんですね」
改めて他者から言われると、左手首を掴む右手に力が入ってしまう。
「なんだか恥ずかしくなってきちゃいました。承認欲求で構成された作品みたいで……」
「悪いことのように言ってますけど、そんなことはないわ」
千咲の左腕にそっと触れて清香は微笑んだ。
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