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清香に自分の心を打ち明けた時よりもずっと緊張して、動揺が続いている千咲は、状況が飲み込めずに視線があちらこちらへと動く。
「私の、勘違い……?」
「有り体に言えば、そうね」
こわばっていた体から一気に力が霧散して、空気の抜けた風船のようにへたり込んでしまった。そして猛烈な羞恥心が雪崩のごとく押し寄せ、体温が急激に上がっていくことを自覚する。
「もうやだ、消えてなくなりたい」
「今消えたらあの作品が完成しないじゃない。私は気にしてないから、はやく立ち直って!」
そう言った清香の声には、隠しきることのできない笑いが存分に含まれていた。
取材当日、これ以上ないほどに緊張する場面を経験した千咲に怖いものはなかった。清香や宮地の予想に反し、優雅さを持った態度でこともなげにインタビューをこなしたのだった。
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