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「あかちゃん、いるんですか?」
「そうだよ。まだ動きは分からないけど、確かにいるよ。触ってみる?」
どうしたものかと悠馬が困って和臣を見ると、ゆっくりと頷いた。椅子から降りて茜のもとへ行き、そっと赤ん坊が育まれている場所へ手を伸ばす。掌では命の動きは分からなかったが、人の温かさは十分伝わってきた。その熱が茜だけが生んだものなのか、赤ん坊と茜の二人分の熱なのか。
どちらにしても、悠馬はその熱に母の愛を感じた。
泣いてはならない、泣いてはまた父にも目の前の茜にも迷惑をかけてしまう。そう思ったけれど、先ほど開いたばかりの涙腺は簡単に緩くなってしまう。
涙をこぼした悠馬を見て茜は一瞬驚いたが、優しく抱きしめる。母の温かみを思い出し、茜に縋り付くように、悠馬は大きく声をあげて泣いた。
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