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当番表
「翔ー、先輩が呼んでんで」
「おーありがとー」
昼休み。友達と教室でご飯を食べてたら、誰か先輩が来たらしい。誰やろ。俺はドアまで歩いた。
「亜弥やん! 珍しいなぁ、亜弥がここまで来てくれんの」
「たまにはな」
ただ俺に会いに来た訳やなさそう。亜弥はめっちゃ照れ屋やからな。わざわざ会いに来るなんてせえへん。
亜弥は脇に挟んだプリントを俺に渡してきた。
「今度の体育祭の保健当番の当番表。お前早く見たがってたし」
俺は急いで確認する。……亜弥と一緒がええねんけど。
「ああっ、亜弥とシフト一緒ちゃう……。なんでや! 亜弥は保健委員会会計やろ! 何とかならへんかったん?」
「だってお前、俺と一緒だとくっついて終わりじゃん。それに、4月の健康診断は同じシフトだったからって委員長が」
俺も一応掛け合ってみたけどな、という亜弥のフォローも虚しく響く。
まだ4月は付き合う前で、亜弥は俺を意識してない頃。夏休みから付き合うようになって、まだまだ思い出が少ない。
「まぁ、他にもチャンスあるよ」
亜弥が俺の頭に手を伸ばして……引っ込めた。
撫でようとしたんや。でも亜弥は照れ屋だから躊躇した。……亜弥の理性が出てこなかったら良かったのに。
「頭撫でればええやん」
「ばか、周りに人がいすぎる」
関西人に馬鹿はくるもんがある。亜弥はなんで大阪弁うつらんのやろ。
「どうせみんな見てへんて。な?」
亜弥が小さく唸る。
まぁこういうとき亜弥はほとんどしてくれへんけど。
その瞬間、頭に手がぽんと乗った。髪がぐしゃぐしゃにされる。
「……これでいいか」
突然のデレに顔が赤くなる。でも照れてるなんて思われたくない。
「さすがです先輩ー」
「おちょくってんのか」
「いや、めっちゃ嬉しくてつい。これからもやってな」
「やらん。……そろそろ時間だし戻るから。帰りは待ってるからな」
「はーい」
亜弥が階段を下りるまで見送る。
今日はええことあるかもしれんな。
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