5分後

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 ――4分前    「で……とは、なんでしょうか?」  悪あがきかな、と思いつつも少しでも逃げたくて、上げ足を取る。  ふぅーんが出てから、1分くらい経っただろうか。  だとすれば、あと4分逃げきれたら私の勝ち。  いや、この状況に勝ち負けなんてない気がするけれど……  私にとっては、勝ちになるかもしれない。  「あ、そう。……そういうこと、言うんだ」  にっこり。  僕、何でも知ってるんだよ。  君の隠してることなんて、全部丸わかりだよ?  そう訴えかけてくるような、細められた瞳と弧を描く唇。  警察官らしくない白い肌に、インテリ風なメタリックフレームのメガネ。  スッキリした髪型は悪く言えば坊ちゃんカットで、ダサくはないけれど、イマドキではない。  でもいつも私は――  「別にさ。僕も君を虐めてやろうと思って、聞いてるわけじゃないけど」  ……嘘だ。  これがいじめでなくて、何だと言うんだろう。  私はこの状況に当てはまる上手い言葉が浮かばず、彼から視線を逸らす。  どうしたってにっこりと微笑む彼に、対抗できる表情が私には見つからない。  窓から通り抜けていく風が、私の首筋をぬるく(さら)う。  流れた汗が、嫌な形でへばりついた。  彼のふぅーんが、耳の奥で張り付くように。    「気になるよね?」  依然、にこりと笑んだまま問いかけてくる彼に、私はただふるふると震えた。  ちりちりと、小さく鈴を揺らすように頭を振る。  鈴の音は響かないけれど、髪の毛がサラサラと擦れる音が静かな室内では聞き取れた。  肩上で切りそろえたボブは、彼が以前一度褒めてくれた黒髪で……ともすれば日本人形のようなこの髪を、彼は、傷みがなくて綺麗だと言ってくれた。  それだけで――彼を意識し始めたと言ったら、笑われるだろうか。
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