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菜月には、昨日の記憶がない。
一日経つとリセットされる。
だから、初恋の人、友だちだった人を憶えていない。
しかし、家族や大好きな祖父母のことは、忘れていなかった。
過去の記憶と引き換えに、文系教科
いわゆる国語や社会、英語の教科書の丸暗記をどんな量でも三〇秒で出来るようになった。
人と話すことが、苦手だ。
やっぱり、あの事故で一人ひとりの
名前を憶えることが出来なくなった。
何度も落としたのは、高校の出席日数と苦手な教科の単位。
菜月の場合、体調が不安定になりやすい為、学校に行くという行動が難しい。
だから、平日でも自宅で過ごすのが多い。
本棚から一冊小説をとる。祖母が大切にしていた本の一つ。
ひらりと封筒が床に落ちた。
拾うと、そこには祖母の文字が書いてあった。
『ばぁちゃんは、菜月に会えて幸せだったよ、孫として生まれてきてくれてありがとう。』
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