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「何か?」
と、当の雲水に問われて、私ははっと気付く。
「いえ、別に」と口の中でもごもごと言い訳していると、「この屏風絵がお好きですか?」と訊かれた。
「あ、はい。実物を見るのは初めてですが、素晴らしいです」
「ええ、これほど見事な洛中洛外図はなかなかございませんね」
「人物も活き活きとして、ほんとうに当時の都を見ているようです」
「そうでございましょう。この屏風は××××××ので」
「え?」
思わず聞き返すと、雲水はこちらを向いて、また淡く笑んだ。
私は慌ててその場を離れた。
他の展示物などもう目に入るものでもない。ただ活き活きと描かれた安土桃山の京の都と、それを眺めて美しく笑む雲水の横顔が脳に焼き付いて離れなかった。
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