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そのひとが指さしたのは、夜空の中の星のどれかひとつだということはわかった。でも、わたしにはすぐに示されたものがわからなかった。
どの星も大小はあれど、数えきれないたくさんの星はその日まで星でしかなかったからだ。
梅雨の晴れ間だった。
昨日までのぐずぐずとはっきりしない天気が嘘のように、真っ青な空が爽やかに目に映えた。
そんな日の放課後、帰宅してスマホを開くとLINEに珍しいひとからメッセージが入っていた。「夕方に会えないかな?」と連絡をくれたのは同じクラスの高遠くんだった。
夕方に会おうなんてずいぶん唐突な話だな、と正直に言うと思った。
実を言うと、彼とは同じクラスである、というだけの関係で、個人的に話したことも同じグループになったこともなかった。
もちろん昼間に個人的に会ったこともなかったので、まじまじとスマホの画面を見た。
LINEに送られてきたのは待ち合わせの時間と場所、それからあまり露出の少ない服装で来ること。
なんのことなのかさっぱりわからなかった。でもわたしは自転車に乗って、約束のコンビニに向かった。「里穂ちゃんのとこに行って宿題教わってくる」という、ごくありふれた言い訳をして家を出た。
なんで自分が突然の呼び出しに嘘までついて応じたのかわからない。
自転車をこぐ左側に、まだ青い稲穂がさわさわと囁いているようだ。田舎の夜空は街明かりが見える低い方がほのかに白く見える。
シャーという聞き慣れた音を立ててタイヤは軽快に回り、キュッとブレーキがかかる。わたしはアンクル丈のデニムとTシャツ、パーカーで彼の前に立った。
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