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 音緒は悠長に桃を食べた。 「なんだよ、別に桃ぐらい食べてもいいだろ」 「なんであと5分って時に桃食べられるの?信じらんない」  水希は憤慨した。 「あんたいつも言ってるじゃない。時の流れは一方向で、過去には戻れないって」 「だからあんなに検討して決めただろ」 「ああ、もう、そんなこと言ってるから時間が」  斎木音緒はその本当の名前を根の王という。正真正銘の神である。それも、生命力の神。 「命の木は、命の巫女でない限り変わらないよ」 「その命の巫女である斗和だから心配なの」  人の命は木のようになっている。その形は人それぞれだが、太い幹にいるうちはどの枝に行くか選択できるが、枝に入ってしまえばその先の選択肢は一気に減る。だから物事は早いうちに正確な判断をしなければならない。  それは音緒の口癖のようなものだ。 「今更焦っても」 「ああもう!だから神って嫌いなの!」 「他の神に会ったことなんかないだろ」  音緒はまた桃を食べた。
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