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「今年の夏に」
掠れた彼の声が静かに私の耳に届く。
心地良い安心するこの声。
「夏休み、会いに行くから・・・」
「うん」
「LINE・・するから」
「うっ・・・うん」
頭をぽんぽんしながら待っててな・・なんて言われたら必死で止めていた涙も・・とりとめなく流れていく。
一粒、一粒 彼の左腕と私の右手に輝くように落ちていった。
彼の冷たい人差し指がそっと頬をなで涙を紡いでくれる。
隣に座り直した彼に身を預け、2人で静かにダイヤモンドのような輝きを見つめ続けた。
それだけで・・充分だから。
「そろそろ帰らないと・・明日早いだろ?」
「・・・・・・うん」
彼は泊まっていけなんて言わない。
余計、明日が辛くなるから。
車に乗り込み私の寮まで送ってくれている間も私達はずっと黙ったままだった。
出来るなら・・このまま着かないで欲しい。
明日は、この静かな時間もきっと過ごせないから。
そんな願いもむなしく車は寮の前に着いてしまった。
エンジンの音とボリュームを絞ったラジオ。
そのラジオからは” I don't want to miss a thing”が流れはじめた。
【終】
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