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「ん、、、ぁ………、はっ…」
突然の息苦しさで意識がゆっくりと浮上する。
重い瞼を開こうにも、光が邪魔をして上手く開けられない。
それでも、唇に感じる不快な感触に片眼をなんとか開いた。
直感的に感じた眩しい光は何かの影で直接的に目に入ってくることはなかった。
ただ、光との間にあるそれ自体も、寝起きの焦点の定まらない視覚でははっきりとは認識できなかった。
「あ、んっ、ふっ、な、ぅっ……にぃ、ぁっ…」
視覚が機能しなくても、否応なしに絡まされる舌の感覚で今自分がどのような状況に置かれているのかを理解した。
理解したのはあくまでその状況だけだが。
「ん、ぁ……、んん」
夢ではない、現実だと意識を覚醒させ、手を使って不快なそれを引き離そうと試みるも、寝起きで力も入らないため、無駄な足掻きと終わる。
「……ふ、起きたかい?」
聞こえた声に、驚きはなかった。
何故か、と問われれば返す答えは複数あるが、一番確実な答えとしては、この家には今自分と彼しかいないから。
男に寝ぼけた様子はない。
愛する妻を亡くしたばかりで、損失感から代わりを求めて義息子に手を出した、と言うのなら、まだ止められる希望はあっただろう。
しかし。
「やっと、手に入れた」
優しく頬を撫でる手は、代わりなどを求めている温度ではなかった。
ゾワッと駆ける嫌悪感に首を振るも、顎を掴まれ抵抗を封じられる。
「君の態度を見るに、気づいているものだとばかり思ってたけど……。母は偉大ってことかな?」
一体何を言っているんだ、この男は。
「君自身、あんなにも警戒していたじゃないか。まぁ、それすらも、私からしたら毛を逆立てる猫のようで可愛かったけどね。この時をどれだけ楽しみにしていたか」
以前から感じていた纏わりつくような視線は、気のせいではなかった、ということか。
では……。
「母さんは……、母さんとは……?」
母と再婚したのも……?
「もちろん。まぁ、流石、親子なだけあるね。君とシテることを想像できて興奮したよ」
その言葉に、腹の奥底から熱い何かが湧いてくる感覚を覚える。
明確な、“怒り”だ。
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