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「詳しく聞かせてくださいますか」
システム手帳を開いて先野がうながすと、柿繁はうなずき、ひとつ咳払いして話し始めた。
二十歳の頃、大学を中退してやることが決まらず悶々と過ごしていた。柿繁徳一もエネルギーを持て余していた若者の例にもれず、毎日鬱屈し、これも若者にありがちな行動にでた──日本じゅうを旅してまわることにしたのだった。
少ない荷物を背負い、わずかばかりの路銀を持って、ふらりと家を出た。自分のやるべきことを見つけるまで帰らないという決意をもって。
旅先でアルバイトなどをしながら期限も決めずに逗留し、ふとなにか思うところがあったらまた別の場所へ旅立つということを繰り返した。様々な人と出会い、世話になりながら、気がつくと一年になろうとしていた。それでもまだ人生の目標あるいは悟りをつかめず放浪は続いていた。果たして自分のやるべきことは見つかるのだろうか。そんな不安がふと心に忍び込むこともあった。
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