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しかし二ヶ月後、琴美はなにも告げずに突然、いなくなった。職場の誰に聞いてもなにも知らず、柿繁は途方に暮れた。
あんなに親しかったのに、信頼されていたと思っていたのに、行き先さえ告げずいきなり消えてしまうなんて。
喪失感に落ち込み、ぼんやりとする日が続き、そのうち柿繁も工場を辞め、また日本各地を放浪する旅に出たのだった。
「あれから四十年、いまさらと言われるかもしれないが、もう一度会いたいんです。そして、お礼を言いたい。私が今日の地位を得られたのは彼女の言葉があったからなんです。『事業を起こせばきっと成功する。だからあちこちで学ぶのが大事だ』と。すごく大人びた言葉で言ってくれて」
メモをとりながら先野はうなずいた。実はこういう依頼もしばしばあるのだ。初恋の人や恩人をさがしてほしいという案件はぜんぜん珍しくない。
人生のどこかに棘のように刺さったまま気になっていた自身の想いを届けたくて依頼してくるのだ。これこそ、探偵として仕事のし甲斐のある案件だといっていい。
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