汗だく北陸旅情

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汗だく北陸旅情

 富山県。北陸三県の東に位置し、立山連峰を望む風光明媚なこの地に、先野はやってきていた。一人だった。人さがしの案件はだいたい一人で担当する。労働集約型の業種である探偵業は人件費の割合が高い。それはそのまま会社の収益に直結する。効率よく人員を動かなければならないのだ。  新幹線を富山で降りた。近代的な駅舎を出ると、窓の大きな路面電車(トラム)が行きかう駅前近くでレンタカーを借りる。海岸の港町に移動し、まずは、働いていたというカマボコ工場を訪ねるところからだ。  ただ、四十年前からいまも勤めている人は誰もいないだろう。当時のことを知る人に連絡してもらい、消息を聞くしかない。もっとも、琴美は失踪時、誰にも行き先を告げなかったらしいから、捜索は骨が折れそうだ。 (冬場の雪の多い季節でなくてよかったぜ)
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