汗だく北陸旅情

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 国道8号線を越えて北上し、海岸道を西へ向かってひた走る。天高く立ち上る白い雲を背負った真夏の日本海が右手に見える。ときどき海水浴場がひょっこり現れて、平日でもビーチパラソルが色とりどりの花のように数多く広げられていた。サーフィンに興じる人の姿も見られた。  エアコンのきいた車内とはいえ、きつい日差しが遠慮なく窓から入り、半袖シャツから出た腕を焼いた。さすがに事務所にいたときのような長袖の上着(スーツ)は着ていなかったが、白いワイシャツにしっかりとネクタイは締め、営業マンのようなカタギっぽい服装でいた。聞き込みをするには、その格好のほうが信用されるのだ。  そろそろカマボコ工場のある場所に着くはずだった。レンタカーのカーナビに案内先として登録されていないその加工場を、依頼者の記憶だけで見当をつけてさがしているわけなのだが──。
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