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 明日もバイトか、と夜空を仰ぐと満天の星空が広がっていた。零れ落ちそうなほどの星たちに覆われて薫は面食らった。今は梅雨なのに。東京ってこんなに星が近かったっけ?星たちの光が体に突き刺さる。  バイト先で浩輔と顔を合わせなきゃいけないと思うと気が滅入る。自分はなんであんなことをしてしまったのか。好意を持ってもらっているだなんて烏滸がましい勘違いをしていたのか。初めてのキスの味は、だなんて。ただの粘膜接触に味なんてあるものか。  ため息をついてスマホを見る。誰からも連絡が来ていないことに不安と安堵の入り混じった気持ちを抱えつつ、左手の人差し指を飾る指輪をそっと撫でた。
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