走り書き

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全身を撫でるようにさらさらと流れていく感覚をすんなりと受け入れながら動きを止めていると、ふと、今自分が享受しているものたちの存在はどこにあるのだろうか、と意識だけが不意に浮き上がる。 視覚とはなんなのか。 聴覚とは何なのか。 嗅覚とは何なのか。 味覚とは何なのか。 触覚とは何なのか。 目のくらむような光景はどこにあるのだろうか。 耳にささやく音色はどこにあるのだろうか。 鼻をくすぐる香りはどこにあるのだろうか。 舌の上で踊る五味はどこにあるのだろうか。 肌を滑る温度はどこにあるのだろうか。 刺激に揺さぶられ熱くなる頭の奥。 脳髄が昂らせる五感の全て。 感じることで目覚めるのか、目覚めによって感じるのか。 私の身体は、どこにあるのか。
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