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くるりと振り向けば、視界の上の方に拳が迫るのが見えた。
身を縮めると、ドカッと音がするも痛みはなく、そのまま懐に飛び込み、その鳩尾に指先をめり込ませる。男はうっと呻くとそのまま倒れ込み、口から何か吐き出した。
鉄の匂いと酸っぱい匂いが混ざったものが鼻をつき顔をしかめると、蹲るその背中に足を乗せる。
「」
顔を近づけて問うも、聞こえないのか男は何も答えない。その一瞬だった。なにか、ピンと糸が張ったような気配がして跳びずさる。すると、先ほどまで己の首があった場所がきらりと光った。
「」
剣を構える新たな敵に、口角が自然と上がるのを感じた。低い姿勢から床を蹴って飛び出すと、相手は上から斬りかかってくる。それを左手の短剣で受け流しながら、相手の左足に自分の体を捻り込む。体制を崩したところで、前のめりになった顎を下から思い切り叩き上げる。
「」
飛び散った歯と伸びる男に、先ほどまで吐き続けていた男はひっと声を上げ、あとじさる。何をするでもなくそれを見つめると、男は悲鳴を上げると背中を向けて去っていった。
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