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プロローグ
「好きです」の一言で物語が大きく動いて。
「ありがとう」の一言で物語が大きく変わって。
「ごめんなさい」の一言で物語が大きくひっくり返された。
「ごめんなさい」から始まったこの物語は、「ありがとう」で結末を迎えたのだ。
全てを語るなら。全てのはじまり、おわりのはじまりは『あの日』に遡る。
新山 運命が桜海 紗良に告白したあの日。
二人で、クラスに囃され照れて焦がれて着物を着たあの日。運命が紗良に想いを告げた『あの日』に、この物語の運命は、その在り方と、結末を大きく変えたのだ。
空が罅割れて落ちてくる。かつて、天が落ちてくると騒ぎ備えた中国人が居たそうだが、はたしてそれが正しい行いだと図らずも証明されてしまった訳だ。
地表に雨露の如く降り注ぐ流星群が、空をキャンパスに幾重もの光の矢を描いてゆく。それはまるで、天が罅割れているようにも、空を引き裂いているようにも見えてら恐ろしくも美しかった。
『コード:エスカトロジー。第三シークエンス起動、最終フェーズに移行します』
神の声が、世界の終わりを告げるラッパの如く、天地遍く一切合切に鳴り響く。
天変地異。世界の終焉の真っ只中で、運命と紗良は見つめ合っていた。
「紗良さん、好きです。付き合ってください」
万感の想いを込めて、運命は言った。
「ありがとう。手伝ってくれて。私も君のことが大好きです。こちらこそ、付き合ってください」
例え世界が終わったとしても、例え自分たちが泡沫に消えたとしても。この熱い想いは、気持ちは、魂は不滅だと。そう信じているから。
光が降り注ぎ、天は罅割れて落ちつつある。全ては等しく終わりに向かっていた。
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