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幼い頃、よくこの海岸に連れてきてもらった。あまり大きな海岸ではなく、かなり穴場の海岸だ。
何てことない思い出で、海はこんなにも広かったのかという驚きと、また家族みんなで行こうねという約束だけは今も覚えている。
結局、その約束は果たされることはなかった。
去年の夏、弟が癌で他界してしまったから。
僕は弟のことを思い出す。
弟が死んでしまってからも僕たち家族はいつも通り変わらず生きてきた。僕の場合は弟が死んだという実感がわかず、どこか現実味がなくて、夢の中を生きているような、そんな感覚だ。
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