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星が弾けた。
夜空を一瞬だけ白く染めて、あとは小さな星々が降ってくる。ぱらぱら、ばらばら。
炎の尾を引いて、無数のソレらが地上へと降り注ぐ――あれはパパだ、ママだ。
おかしな話だ。だって私はこの光景を見てなどいないのだから。
けれども確かに目の前では、無数の星が次から次へ。地上へと、そして私の元へと帰ってくる。
「おかえりなさい」
おかえりなさい、おかえりなさい、パパ、ママ。
あの日、言えなかった言葉を。
だって、体なんて一つも残らなかったじゃないか。航空機の爆発事故。空中ではじけて、遺物はほとんど海の底。かろうじて見つかった指の一本、歯の一欠片、そんなちっぽけな遺物に喜ぶ他の遺族たちに混じって、あの時の私のなんと惨めだったことか。
純粋のその死を悲しむこともできず、一人遺された理不尽を罵ることもできず、そもそも二人が本当にこの世界からいなくなったのだと、その現実をこの目で見て、確信することすら許されず。
なんて宙ぶらりん。
笑っちゃう、笑えちゃうよ、私のそれからの人生は。遺産目当ての親戚中をたらいまわし。ドラマか漫画で見たような定番も、現実となれば笑うしかない。あれは、他人事だからおもしろかったのだ。
でも、二人が帰ってきてくれたから。それならば、いっぱい話そう。
空を覆う焔玉。その中の二つがすいっとこちらに飛んできて、私の中へと吸い込まれていった。
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