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死んでしまった恋人
***
「っ、な、んで……」
生まれて初めて肌を合わせ、情を交わした、夢のように幸せな一夜だった。
二人揃って、世界が滅亡することに感謝したほどだ。
そうでなければ、互いの肌には触れられなかっただろうから。
けれど。
「ばかなひとだ」
ポツリと呟きながら、オスカーはリュカの白い顔を見下ろす。
どうせ二人とも死ぬ。
なのに、何故。
何故、一人で先に死んでしまったのか。
昨夜、リュカが「世界が終わるまで共にいて欲しい」と願ったのに、オスカーが一度城へ帰ると言ったからか。
必ず戻ると、すぐに戻ると言ったのに。
置いていかれたと、裏切られたと思ったのか。
「近衛将軍であり、王の騎士でもある私が、何も言わずに消えることは出来ないのです」
そう告げたオスカーが、リュカよりも仕える王を取ったと思ったのか。
愛するリュカよりも、リュカを愛さないこの国を取ったと思ったのか。
あれほど、リュカのために生きてきたのだと、伝えたのに。
「最後の日を、あなたと過ごさない訳がないじゃないか」
涙の跡の残る、青ざめた頬に口づける。
ほんのちょっぴり塩辛くて、少し前まで生きていたことが分かった。
あと、ほんの、数刻。
オスカーを信じて、待っていてくれれば。
ともに、死ぬことが出来たのに。
「予言者のくせに、なんでわからないんですか……あんなに、何もかも見通していたくせに……」
オスカーの目からも塩水が流れ落ち、恋人の青ざめた頬を濡らす。
どうして、どうして、どうして。
硬くなりつつある体を抱きしめながら、繰り返し罵って、ふと気がついた。
「……あぁ、もしかしたら」
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