扉を開けると、恋人が死んでいた。

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扉を開けると、恋人が死んでいた。

扉を開けると、恋人が死んでいた。 「リュカ、さま……」 息を切らせて駆け込んできたオスカーは、恋人の名を呼んだきり絶句した。 そのままずるずるとその場に座り込み、両手で顔を覆って呻く。 「……あれほど、早まらないでくれと、言ったのに」 豪奢なテーブルにうつ伏せるように死んでいるのは、オスカーが十年以上恋い焦がれた人だ。 よろよろと立ち上がり、既に魂の離れた恋人に近づけば、テーブルに溢れた葡萄酒からは思考を狂わせるような甘い匂いがする。 生まれと立場の貴さゆえに常に身の危険に晒されていた彼が、何事かあれば穢される前に自死しようと、常備していた毒薬だろう。 彼は毒を煽って死んだのだ。 オスカーのいない場所で、ひとりで。 「リュカ様……なぜ、私を信じて下さらなかったのですか……!」 血を吐くような声で慟哭し、オスカーは冷たい骸を力の限り抱きしめた。
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