15人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
扉を開けると、恋人が死んでいた。
扉を開けると、恋人が死んでいた。
「リュカ、さま……」
息を切らせて駆け込んできたオスカーは、恋人の名を呼んだきり絶句した。
そのままずるずるとその場に座り込み、両手で顔を覆って呻く。
「……あれほど、早まらないでくれと、言ったのに」
豪奢なテーブルにうつ伏せるように死んでいるのは、オスカーが十年以上恋い焦がれた人だ。
よろよろと立ち上がり、既に魂の離れた恋人に近づけば、テーブルに溢れた葡萄酒からは思考を狂わせるような甘い匂いがする。
生まれと立場の貴さゆえに常に身の危険に晒されていた彼が、何事かあれば穢される前に自死しようと、常備していた毒薬だろう。
彼は毒を煽って死んだのだ。
オスカーのいない場所で、ひとりで。
「リュカ様……なぜ、私を信じて下さらなかったのですか……!」
血を吐くような声で慟哭し、オスカーは冷たい骸を力の限り抱きしめた。
最初のコメントを投稿しよう!