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愛の告白
「……ッ、愛……?」
血の気をなくして、リュカがよろりと揺らめく。
神子は、純潔でなければならない。
色恋沙汰は禁忌だ。
神の子である神子を穢そうとした者は、神殿から破門され、神の国へ往く権利を奪われる。
そして邪悪な魔物として心の臓を破魔の剣で刺し貫かれ、永遠に輪廻を巡り、償わねばならない。
「オスカー……どの……それ、は、」
空気を求めて喘ぐように、リュカは切れ切れに言葉を絞り出した。
神子の立場を、あるべき姿を、誰よりも理解しているからこそ、オスカーの言葉にリュカは蒼白になるほど動揺したのだ。
誰かに聞かれれば、オスカーの首はあっという間に胴と離れ、未来永劫輪廻の中で苦しみ続けなければならないのだから。
けれどその動揺は、そのままオスカーへの感情の大きさでもある。
「リュカ様、あなたの信頼を裏切ってしまって、申し訳ありません。……けれど、私は」
十年の間に積み上げた信頼と友愛を、失うかもしれない。
そう思っていても、オスカーは、伝えずにはいられなかった。
たとえ永遠に苦しむとしても、後悔などしないと信じられた。
椅子から立ち上がり、リュカの前に跪く。
ただの男が、愛する者に愛を乞うかのように、熱い眼差しで目の前の愛する者を見つめる。
そして、澄み切った気持ちのまま、禁忌の愛を口にした。
「初めてお目にかかった時から、私はあなたを愛しています」
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