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夢のような告白
「あなたを守る剣になりたくて、あなたを守る盾でありたくて、私は近衛騎士として務めておりました。王でもなく、国でもなく、あなたのために」
精一杯柔らかな声で告げながら、オスカーは内面の激情を押し隠していた。
近衛騎士として栄達を求めたのは、少しでも上に登って、王の側に居たかったからだ。
異母弟を気にかけている現王は、月に何度か護衛たちを伴って神殿に足を運ぶ。
けれど、リュカの住まう神殿の奥まで伴う事ができる護衛は、一人だけだ。
『王の騎士』と呼ばれる、そのただ一人の護衛は、近衛騎士の中で最も能力が高く、最も王から信頼された者が選ばれる。
王の騎士としての立場を得るために、オスカーは必死になって努力したのだ。
リュカに会うためだけに。
「この想いを受け入れられたいなど、身の程知らずな望みは抱いておりません。ただ、お伝えしたかったのです。この世界が滅んでしまう前に」
満ち足りた気持ちで告げれば、リュカは白金の美しい眼球がこぼれ落ちそうなほどに目を見開いた。
「……酷い方だ」
春の陽光のような輝く瞳に透明な涙を溢れさせ、幼子のように顔を歪めて、リュカはオスカーを詰った。
「ご自分の心だけ、楽にして、そして、死を待とう、だなんて……随分と、身勝手ですね」
「リュカ様……?」
ポロポロと大粒の涙を零しながら、金色の瞳でオスカーを射抜くように見つめているのは、いつも俗世とは隔絶されたような静謐な空気を纏わせている、高潔で美しい神子ではなかった。
そこにいるのは、年相応に悲しみに打ちひしがれる、哀れな青年だった。
「オスカー殿……私も……、私は」
意を決したように、リュカが強い意志の籠もった眼差しでオスカーを見つめた。
「いつもこの国と民のために剣を振るい、守ってくださったあなたを、……そして、あらゆる悲しみから私を守ろうとして下さるあなたを、ずっと、……ずっと、お慕いしておりました」
「っな、そんな、ばかな……」
止まってしまいそうなほど、どくんと跳ねた心臓が、ドクドクと高速で拍を叩く。
高揚に痛む胸を押さえて、オスカーは呻くように呟いた。
「そんな……奇跡、が」
「奇跡でも、なんでもありません。現実です」
信じられないとばかりに首を振るオスカーに、リュカが苦笑して近寄ってきた。
床に跪いたままのオスカーの前にそっと膝をつき、視線を合わせる。
「私も、あなたを愛しております。オスカー殿」
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