四年生のころの麻衣子

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四年生のころの麻衣子

 兄ちゃんとケンカした。些細なことが原因だった。おやつのアイスクリーム、はんぶんこだというのに兄ちゃんの方が明らかに大きかったことにケチつけたのがそれだった。 「そういうケチ臭いこと言ってたら、ケチな大人にしかなれないぞ!」  そう言われて当時四年生の私はカチンと来たのかもっともなことを言われたのがシャクだったのか意固地になって関係ないことまでわめき散らした。  そもそも7つ上の兄ちゃんに逆らうこと自体どうかしていた。普段は妹思いで、両親やおじいちゃんが畑に出て家にいない時は身の回りの世話をしてくれる優しい高校生の兄。あの時も二人で親には内緒で二本目のアイスに手を出して、 「麻衣子はお腹を壊すから、少しだけな」 と言われてはんぶんこのはずなのに渡されたそれにケチつけたんだ。一度入ったスイッチを切る方法は当時の私にはわからなかった。  普段なら兄ちゃんが折れて収まるところがその日に限って収まらず、畑から帰ってきたお母さんに目撃されてはこっぴどく叱られ、そこで止めて置けばいいのに、 「兄ちゃんなんか大ッキライだ。こないだ誕生日にあげた『おやくそくカード』も返してよね!」 「ああ、要らねーよ!そんなゴミ」 再びお母さんの前でさらに火がついて、おじいちゃんまでが私たち二人のケンカを止める始末になった。 「売り言葉に買い言葉」  そのあと、おじいちゃんが私たちを仏間で正座させて、ケンカになると最も戒めるべきことの一つであることを教えてくれた。自分が情けなくて、兄ちゃんの横で正座をして膝の上に置いた拳に涙をポタポタと落として泣いていた記憶が時おり甦る――。
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