Physician, heal thyself

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Physician, heal thyself

 独占欲強いかもねえ、と言われてはっとする。  そんなことないです、と答えた自分の声はなんだか裏返っている。  手招きをする、艶っぽい相手がいるかもしれない。  ああ、そうか夜目に遠目に笠の内って言い方があるんだった。  もののけとか、そうだあの人「日本のもののけ」が苦手だって言っていたから、それでたとえればいいじゃない、ああ僕って頭いい。  なのに、裏目に出ている。  馬鹿にすんなみたいな感じで、通話がガチャ切り。  赤い唇をにんまりさせて、着流しも色っぽく、傘を深めにさした女が頭にうかんで、あたふたと首を左右に振る。  お兄さん、遊びましょうとか言って手招きする。  真っ白いもちもちした肌に、つるんとした首筋。  東洋的な色気とか、なんとか。 「怒らないでくださいよぉ……」  情けない声が出て、思わずメッセージを送る。  嫌わないでください、って言えたらどんなにいいだろう。  これじゃ、きっともう……。  悲観して目がじんわりと滲んできたとき、メッセージが入る。  まどの、そとをみて、ください。  ひらがなと、妙に句読点の多いメッセージ。  落ち着け、落ち着け落ち着け。  僕は深呼吸をして、寝つきがわるいためにあえて買った遮光カーテンをゆっくり開く。  なにもない、闇があるだけ。  なんだ、いたずらなんかして。おとなげない。最初からないけど。    うしろ、みて。  メッセージが来る。相手が相手じゃなかったら、ホラーじゃないか。  いらっしゃいませ。と、僕はやっぱり冷静に出迎えた。  もどかしい、なんだかぜんぶ。  ぜんぶ、いろんなことが、ぜんぶ。
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