おまけ2 もう切ないとは言わせない

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おまけ2 もう切ないとは言わせない

 金星が消えて、朝が来る。  寄り添ったままうとうとして、とりとめない話をして、話題がなくなったら唇を重ねて。  嬉しいのに、瞼はすごく重くてやるせない。  帰したくなくて、仕方ない。  だんだん透けて行く自分を、悲しそうに見ないで。  かぶっていたフードを掴む手が、力を込めている。  ほとんど空気になっていく感触にすがりついて、僕はようやく絞り出すように、言えなかったことばを伝える。  泣きそうになる。耳が痛くなる。辛いからじゃなくて、熱くて。  あなた以外は、どうなってもいい。  世界なんかいらない。  熱っぽい声に何も答えられないくせに、どうして時間はうらめしく動いていくんだろう。君以外なにもいらない。  嬉しい。  消える寸前にきこえた言葉に、胸が甘くしめつけられる。  色恋なんかもう、いらないって思っていたくせに。  色恋なんかもう、無意味だって捨てたはずなのに。  おやすみなさい。  おやすみなさい。  ストリーミング放送で音楽を聴きながら、帰り道。  妙なバンド名の曲。  もう切ないとは言わせない。  遮光カーテンを閉めて、僕はそっと眠りにつく。 ***************  ゲスの極み乙女。のこの曲が大好きなので……お粗末でした。  推しは休日課長氏です。くまのぬいぐるみみたいで、かわいい。      
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