異常さは時に。正常を錯覚させる。

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異常さは時に。正常を錯覚させる。

「失礼します。」 ノックをして職員室に入る。 担任の姿はなかった。 またタバコを吸いに行っているのだろう。 夏休みがあけるまでタバコを吸うイメージはなかったが 最近は時間があるとずっとタバコを吸いに行っているようだ。 「先生、受け取りに来ました。」 写真部顧問の先生は あぁと言ってカメラを僕に手渡した。 「いいか、このカメラは亡くなった彼女の叔父さんの大切なカメラだ!写真界では有名なカメラマンだった人で、彼女にとって夢であり大切な人だ。 大切に扱ってくれ」 「えぇ!"大切に"扱いますよ。」 「あとこの写真は私が現像しておいた。」 ………. ………… フッ なんて顔してるんだ 俺と初めて会った時くらいの飛びっきりの笑顔じゃないか こんな写真ですら、本物の笑顔を引き出せるのかよ。 才能というか超能力の粋だな。 「あ!っ、先生あと住所教えて欲しいんですけど、」 「あぁ彼女の、住所か!」 「そうですね。それともう一人住所を教えて欲しいんですけど。」 ___________________________________________________ 13時45分 昼から学校をサボって 現在『被害者』家の前 今大人に介入させるわけにはいかないために 釘を打ちつけておく必要があった。 ついでに彼について色々と裏付けしたいこともあって、ここに来た。 ピンポーン インターホンを押して数秒 「はい?どちら様でしょうか?、、、、 息子と同じ制服?」 「○○高校の『被害者』君と同じクラスの者です。 『被害者』君のことで少しお話があってきました。」 少し沈黙があってから 「上がってもらっても、いいかしら」 少しして 扉を開き 家に入れてもらい、リビングに通された。 そこには『被害者』の父親と大量のトロフィーがあった。 父親に軽く会釈して 「すごい、沢山トロフィーがあるんですね。」 「あぁ!息子は、なんでもできる子どもだったからね。 正直自慢の息子だよ。 彼が努力してるところなんか見たことなかったけれど。 いつでも一番を取ってきていたよ。」 やっぱり『被害者』は負けを知らない。 眉目秀麗、容姿も抜群に良いし、全てのことに秀でていた。 そう全てにおいて。 人をイジメることにでさえ秀でていた。 「君がこんな時間にここに来た理由は、最近息子が怪我まみれで返ってくること関係しているのかな?」 「まぁそうですね。」 俺は案内されていた椅子に座り そのタイミングで母親も、お茶を持って現れた。 「単刀直入に聞かせてもらうがあの傷は何だね? 息子に聞いても自転車で転んだだの、無視するだので真面目に答えてはくれないんだ。」 「それをお話しするために、ここに来たんですが 本題に入る前に幾つか確認したいことがあって、それから聞いてもよろしいでしょうか?」 「構わないが、一体なんだね?」 「まず一つは、平日のお昼に何故お父さんは家にいるのか? 二つ目は高校2年になる時、彼の身に何か重大なことが起きたんじゃないのか? 僕の仮説?まぁ仮説というほど大したものでは無いのですが この二つの質問は 一つの答えで返せるものになっているんじゃないでしょうか?」 「驚いたな!その通りだ。 4月の始まりに私が病気を患ってしまって。 手術しないといけないくらいの物でね。 同時期に会社の方も不景気になって そのまま失業する形になってしまってね。 最近になって退院できて仕事を探していて。 まぁ恥ずかしい話 私の病気のせいで息子は色々と諦めざる、おえない状況になってしまったんだ。」 諦めたねぇ 思ったよりくだらないなぁ、 自分の中で何かにガッカリしてしまった。 「まぁ、ほぼほぼ思った通りでした。」 すーーっと深めに、鼻で息を吸い ため息混じりに口から息を吐いた。 頂いたお茶を一口、口に入れて喉を潤し、 喋る準備をした。 やはり大人と話すのは少しばかり緊張してしまう。 もう一度深めの深呼吸をして 「さて本題に入りましょうか。」と背筋を伸ばした。
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