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ホームルームが終わり『主犯』が僕に近づいて不適に笑った。
「残念だったな、お前を守ってくれてたナイト様はご自分で、勝手に死んじまいやがったよ。」
驚いた。
彼の非情な言葉にでわなく
自分の感情に
僕は驚いてしまったのだ。
彼の言葉は正直予想できていた。
怒りが湧き出てくるもんだと思っていた。
でも実際は何も感じなかった。
手の先から、どんどん冷めていき頭の方に到達する頃には自分の感情が壊れていくのを感じた。
「君はとても強くて、とても弱い人間なんだね。」
『主犯』は何が起きているのか分からないような顔をして、少しずつ何が起きたのか理解するように僕に目線を落とした。
まさに鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をしていた。
そして
僕に、初めて感情のある顔を見せて
歯を食いしばり、怒りを見せた。
「おい!お前ら、こいつのこと抑えろ。」
『主犯』は誰に言うでもなく、クラスの人間たちに声をかけた。
だが誰一人として動こうとするやつはいなかった。
「おい!何してんだ聞こえねぇのかよ」
クラスの一人が立ち上がり『主犯』の胸ぐらを掴んだ。
「もうやめろよ、こんなこと、お前のせいで人一人、自殺したんだぞ。」
そうだと言わんばかりに何人かの人間が立ち上がった。
「はぁ?なんだよ。お前ら、まるで自分たちのせいじゃないみたいな、言い方じゃねぇか。
お前ら全員共犯に決まってんだろ、何を今更立ち上がって正義、気取ってんだよ。もっと前から止めようと思えば止められてたろ。
今座って黙ってる奴らもそうだよ。このクラス全員漏れなく、クズ野郎のくせに
何被害者面してんだ。」
「うるせぇ」
胸ぐらを掴んでいたやつが『主犯』を殴りつけた、
それが起爆剤になり他に立ち上がっていた奴らも襲い始めた。
『主犯』を押さえつけ、彼らは僕に。
「お前もやれよ。一番被害を受けたのはお前だろ。」
と膝をつかせ、両手を押さえつけ僕の方に向かせた。
僕は立ち上がり、彼の前に行って
彼を見つめた。
『主犯』は僕を見つめ、僕をイジメていたときのような
全く感情がない笑顔を向けた。
僕は何を考えているのだろうか?
仕返ししたいのか?
怒りをぶつけて殴って責任転換したいのだろうか?
いや何も考えてなかった。何も感じることが出来なかった。
ボロボロと治りきった瘡蓋が勝手に落ちていくように
一つ一つ感情が溢れ落ちていった。
僕は黙ったまま振り返って鞄を取った。
「おい!殴れよ!悔しくねぇのか」
僕は驚いて足を止めてしまった、
その言葉を放ったのはクラスの奴らではなく
『主犯』から出た言葉だったからだ。
「お前は俺を殺したいくらい憎んでるはずだろ。殴れよ殺せよ。臆病者!!そんなんだからイジメられて、親友を死に追いやるんだよ。」
クラスの奴らが殴りつけて黙らせようとするが
それを振り切って『主犯』は僕の真後ろに立った。
「オラ!殴れよ。仕返せよ。殺してみろよ!お前が!俺を!殺せよ。」
僕は振り返って微笑んで見せて。
止めた足を再度動かし教室を出た。
その日を境に彼は『主犯』から『被害者』に変わった。
学校出ようとしたとき
校門の外でタバコを吸っていた担任とすれ違ったが止められることはなく。
視界に入らなかったとでも言いたげに、ため息をついていた。
眩しさで
見上げた青空は、人の気持ちなど、いっさいお構いなしに、美しい、青い光を放っていた。
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