一雫の青は、透明な水に滲んで広がる

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一雫の青は、透明な水に滲んで広がる

その日。 久しぶりに 恐怖や絶望を感じず学校が終わった。 誰も話しかけてこず 誰かに何かされることもない。 何故か孤独とは感じず その状況がいやに心地よく感じた。 高校一年の時『親友』と出会った。 東京から福岡に引っ越しが決まっていたため、 高校受験も最初から福岡の学校にしてあり、 友だちなんて一人もいない状況で高校生活がスタートしていた。 僕は自分の影を見ていると自分はここに居るんだなと安心する。 家には誰もおらず外にも誰も知っている人がいない。 自分の存在が希薄化して、 自分がここにいるという証明は光が作り出した影以外には無かったのだ。 下ばっかり見ていた僕は消極的な人間に見えたのだろう。 周りの人たちも、そんな僕に話しかけるのを躊躇っていた。 そんな時に いつもの笑顔で近づいて 「なんでそんなに下ばかり見てるんだい?なんか素敵なものでも、転がっているの?」 多分悪気のない、 その、ど直球な言葉に驚いて、たじろんでしまった僕を尻目に。 「僕は空が好きなんだ。上を向きすぎて電柱にぶつかったことがあるくらいだよ。」 笑顔で彼は上を向きながらそう言った。 「そんな、くだらないことを自身満々に言われても。」 気がついたらなんだか僕も笑っていて 初めて喋った彼に、なぜ下を向いていたか話した。 彼はやれやれと言わんばかりに 両手を上に挙げて首を振った。 「ふーん、じゃあもう下を向く必要ないね。 僕が君を視認してる。今僕が、君は幻じゃないと証明してる。 今、君は生きているよ。 それに、僕が君の友だちになるよ。だから君は、これからずっと生きていけるよ。」 あっけらかんとした口調だったけれど 僕の人生において一番の悩みだったものを 彼は何事もなかったように、ぶち壊して 僕を救ってくれたのだ。 希薄した僕の青春に一雫の青色を落としてくれた。 思えば僕は彼に救われるばかりで、彼に何かしてあげたことはあっただろうか? 僕は何もできていない、だからこそ 今僕は全てをかけて彼の願いを叶える。 それがどんなやり方でも、それがどんなに間違っていようと。 この計画は必ず成し遂げる。 でも彼の為にとは言わない 彼を言い訳にしない為に。 彼に責任をかけない為に。 彼が罪悪感を抱かない為に。 僕が今からやることは決して正しいことではない。 正義とは程遠い、偽善だ! それを彼に背負わせたりは絶対にしない 君があの日くれた 綺麗な青色が濁って群青色になったって 成し遂げてみせる。 それと多分、 …… 彼のおかげと言えば良いのか? 僕も空を見上げることが、癖になってしまっていた。
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