流星雨の中で

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流星雨の中で

 その日、世界には流星の雨が降る。  ありきたりな比喩などではない。文字通り、『星の雨』が降るのだ。百年に一度、俺たち人間が知る『雨』のように、音を立てながら地面に降り注ぐ。どこにでもありそうな迷信めいた話だが、古い映像や写真で確かめる限り、世界には確かに星が降る瞬間があるらしい。写真や映像の中の人々は、キラキラと輝く星々が降る世界の中を、傘の花を咲かせて歩いていた。  もちろん、そんな御伽噺みたいな事象には、それに見合った噂というものが存在する。流星雨が降る日、街はずれの丘の上で告白すれば、必ず結ばれるらしい。伝説と言われている恋の噂だった。  だが、意外にもこの話は信ぴょう性が高く、百年前に実際に試した人はほとんどの確立で恋を叶えたらしい。そのような記述が残っていたという話だが、実際にこの目で見ているわけではないから分からない。でも、同級生たち――特に女子は頬を桃色に染めながら、夢見心地な様子で話していた。  その様子をぼんやりと見ていた俺は、快晴の空に目をやった。件の日はもう明日に迫っている。このままいけば、明日も晴天だろう。晴れれば、大量に振る星が見られるのだろうか。  この話を信じているわけではないが、どうせなら利用してやろうかとは思っている。百年に一度だ。次に流星雨が降る時には、もうこのクラスの誰もが死んでいるから、チャンスは明日だけ。  俺は教室を後にして、涙の一つすら滲ませていない青空を一瞥する。  俺は明日、好きでもない女に告白をする。  そして、人の縁をバッサリと切るみたいにフラれにいくのだ。
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